ゼミの紹介(2024年度版)

当ゼミで進めていることや進めていきたいことをご紹介します。学生の皆さんに配布されたゼミ紹介パンフレットの内容との重複を含みます。演習1の選考については「ゼミ選考方法と選考基準」を参照ください。

私(森)の専門と興味

専門

次の2つの分野の分野の中間あたりにいます。やや後者寄りです。

コンピュータに支援された共同作業 (CSCW, Computer Supported Cooperative Work)
人間が様々な活動をするときに、情報システムが助けると作業への効果も作業の効率も上がります。そのような情報システムとはどのようなもので、どのようなことに気をつけてつくっていけばよいのかを考えています。CSCWの対象領域は、対面も遠隔もあります。また、共同作業する関係性や、活動内容もさまざまです。
コンピュータに支援された協同学習 (CSCL, Computer Supported Collaborative Learning)
人間が学習するときには本質的に他者との関わりが避けられません。その関わりを最大限に活かそうとするものが協同学習です。その協同学習を情報システムが助けられれば学習の効率も上がり学習効果も高くなります。CSCWと同様に、そのような情報システムについて考えています。

このような分野の中でワークショップ(学習活動とも捉えられる、ゆるやかに対面の共同作業環境)を対象にして近年は研究を進めています。

この他にも小学校や高校の情報教育や大学の情報系科目の教え方や学び方についての研究にも長年関わっています。

ここに挙げた言葉を今すぐに知らなくても構いません。また、分かりやすさを優先した説明です。実際には、周辺知識も含めてもう少し深い理解が必要になります。

興味

ものづくり

私は、学部で電気・電子工学について、大学院で知能情報学について学びました。何かをつくったり、いじったりすることが好きです。知らない仕組みを見つけたら分解したり分析したくなります。機械や電気回路、ソフトウェアなど様々な仕組みに興味があります。現在はソフトウェアを扱うことがほとんどですが。

また、研究とも関連して「ものづくり」がもっと日常的にできる世界になるとよいと思っています。これはどんどん実現されていっており、誰もが手を出せばすぐに手が届くほど身近になっています。しかし未だに、ものづくりに強い興味がある人たちの中に留まっていることは否めません。

個人的には「ふと思ったものをすぐに手元でつくれたら楽しい」と思うのですが、これを読んでいる皆さんはいかがでしょうか。すぐにつくれたらよいと思いませんか。なかなかそうならないのがなぜなのかに興味があります。

情報教育

さらに、前述の専門にも書いたように、ソフトウェアに限らずコンピュータシステムがどのように人々に働きかけているのか、どのようにすればより効果的で効率的な働きをするのかにも、興味があります。単純にコンピュータシステムを用意すればよいわけではありません。優れたソフトウェアがあればすべて解決とは言えません。

実際、多くのシステム開発は困難な道を乗り越えてすら相応の評価を受けることはなかなかありません。利用者たちとの適切な関係が築けてないからだと感じています。つまり利用者から見たときに「使えない」システムになりがちということです。これは必ずしも情報システムやソフトウェアが悪いと断じることはできません。利用者側の認識不足やスキル不足も有り得ます。そのミスマッチの結果と言えるでしょう。

システム開発では得てして物理的なシステム導入のための物体的な面に注目されがちですが、実のところ利用者が上手く使っていけるようにスキルアップするなどの教育面も非常に重要ということです。どのような教育が必要かは、対象に寄りけりです。しかし、単に操作の習熟で終わるようなことではないと考えています。

「教育」は誤解を受けやすい言葉だと感じています。特に「詰め込み教育」のような「教え込む」教育を真っ先に思い浮かべる人たちには受けの悪い言葉です。実際は、教育を受ける人が「学ぶ」ために促したり助けたりするというイメージの方が昨今の教育観です。

ゼミのテーマ

協同 × ものづくり + 情報システム = これからの情報教育

古来より、人間は実際に手を動かして「もの」をつくってきました。個人が持つ力を拡張できる道具が人間を人間たらしめたと言えます。現在の社会では、情報システムが欠かせません。情報システムは、現代の道具と言えるでしょう。これからの時代は、ソフトウェアもハードウェアも自分の道具にしなければなりません。

人が協力して作業するときには、その場に特有の道具が必要になります。その道具を用意するためには、それぞれの場での課題分析が求められます。その課題を発見して、自分でつくって解決してみませんか。自分に必要な道具を自分でつくれば、自分にぴったりのものができます

30年近く前に、スティーブ・ジョブズは次のように言っています。

人間は道具を作ることによって、生まれもった能力を劇的に増幅できるんだ

映画「スティーブ・ジョブズ 1995~失われたインタビュー~ 」特別映像

これまでの歴史を通し、人類が発明したものの中でコンピューターが一番かそれに近い重要性を持つ

映画「スティーブ・ジョブズ 1995~失われたインタビュー~ 」特別映像

実際のところ、他にも様々な人が同様の指摘をしています。誰がなぜ、そのように指摘するに至ったのでしょうか。実際に先人がそこに至った理由を体験しながら学びませんか。

道具を個々人にカスタマイズしてつくっていくことが大切な一方で、皆が使うコンピューターを皆でうまく使っていくための方策も必要です。どのような教育が必要かを考えてみませんか。

ゼミ活動

多くの学生の皆さんは、学部を卒業すると大学を離れます。そうするとその後は「研究なんて関係ない」と思っているかもしれません。しかし実際は、働き始めた後こそ論説文を読み書きできる能力が求められるようになります。仕事相手を説得して相手も自分も得しなければなりません。忘れてはならないのは、その仕事が対象とする人々(対象者)です。対象者の得が仕事相手の得であり自分の得になります。そのために、その対象者をよく理解しなければなりません。それは研究と同じことです。

研究基礎力をつけるための活動

当ゼミでは、研究基礎力をつけるために、文献講読、論文執筆をします。文献講読は他の活動の合間に行います。論文執筆は、毎年度末に行います。

文献講読

文献講読は、学術的な論文や書籍を分担して読んで共有する場です。輪読とも言います。当ゼミでは、ゼミのテーマに沿った文献を全員で分担して読んでいきます。文献はそのときどきで変わります。2022年度は書籍を1冊分を分担しましたが、今年度は書籍にするのか論文リスト(リーディングリスト)方式にするのか未定です。

文献講読では、文献の読み方やまとめ方が大切です。いきなりできることではありませんので、徐々に3年間で学んでいってもらいます。

論文執筆

論文執筆は、所定の論文を書き上げることです。2, 3年生(演習1, 2)はゼミ論文、4年生(演習3、卒業研究)は卒業論文として提出してもらいます。いずれの場合でも、ゼミ活動の一環として後述する研究活動をしてもらい、その研究成果をまとめたものを期待しています。

論文執筆では、論文に必要な情報や配置など、書き方について知ることが大切です。文献講読と連動して学術的な文章の特徴を理解し、それを自分の論文の中で実践的に出していきましょう。これも急にできる技能ではありませんので、3年間でステップアップしてもらいます。

協同的ものづくりにかかわる研究活動

人が協同するとき、そこに関わった人たちの間では学習が起きます。学生の皆さんにとって「学習」というと、「授業」や「勉強」を想起するかもしれません。それもひとつの学習の場面です。ここではもっと広く捉えて、人が生きていく中で自然に行われる知的活動と考えてよいでしょう。

そのような学習の場面のひとつとして、ものづくりを考えます。先述のようにハードウェアかソフトウェアかを限定しませんが、ここではひとまずハードウェア的、つまり物理的なものを想像して構いません。

ものづくりにおいて、「もの」だけが独立して存在することはありません。使う人の要望、使う理由、つくる人の期待や技術、つくる理由など、様々な人間の営みの中にあります。そのような「ものづくり」という行為について、皆さん自身も実践しながら紐解いていきます。

この協同的ものづくりの研究活動では次のようなことを実施します。これ以外にも場面に応じて柔軟に実施していきます。これらを通じて研究を進めていきます。

フィールド調査

フィールド調査とは、何らかの調査したい行為が実行される現場を観察することです。また、その結果を分析していきます。当ゼミのテーマであれば、「もの」が使われる現場や「つくる」現場が対象です。まずは観察する方法を知り、実践することから始めます。

どのようなフィールド(現場)を対象にするかは、皆さんの興味に応じて決めます。

アイディア出し(アイディエーション)

フィールド調査の結果から問題発見をして共有し、課題抽出します。その課題に対して解決(または改善)の方法を見つけていきます。このような一連の活動をアイディア出しと呼びます。

慣れないうちは特に、アイディア出しを一人ですることは困難です。慣れた人(熟練者)でも何人かでアイディアを出し合うことはよくあります。当ゼミでもアイディア出しを経験していきます。

ものづくり

実際に、解決策(または改善策)として何かをつくってみることを経験します。

つくって試してみれば分かることもたくさんあります。言うは易く行うは難しです。また、巧遅は拙速に如かずです。まずはどのようなものであっても実行してみることが大切です。

つくってみたものは、「もの」そのものを評価するだけでなく、使われ方やつくり方も評価しなければなりません。特に使われ方の評価は重要です。評価法とともに学びます。

情報システムにかかわる研究活動

「ものづくり」としての情報システムについて考える前に、情報システムの仕組みを理解することが肝要です。仕組みを理解するために、実際につくってみて感じましょう。その上で、「ものづくり」としての情報システムにも挑戦していくと良いでしょう。

実際にどのようなシステムをつくっていくのかは、皆さんの興味に応じて決めます。

情報教育にかかわる研究活動

ものづくりにおける「もの」にせよ情報システムにせよ、それを使う人(利用者)がいてこそ意味のあるものです。利用者はどのような人たちで、どのようにしたら使えるようになるのかなどを考えるためには、素朴に「教える」だけでは上手くいかないことがほとんどです。教える方法論(学びやすくするための方法論)を学びます。

実際にどのような教育について考えるかは、皆さんの興味に応じて決めます。

年間スケジュール

各学年の年間スケジュールの概要は次のとおりです。皆さんの興味や人数など状況に応じて多少のアレンジがあります。ゼミ論文や卒業論文については、「ゼミ論文・卒業論文の進め方」に詳細が書かれています。

2年生(演習1)

研究基礎力の中でも、基礎的な知識や技能の獲得を目指します。その他の活動は、ひととおり経験した上で今後の方向性を個々に見据えていってもらいます。グループ型のプロジェクト研究を中心に活動を進めます。

年度末には、研究成果をまとめた論文(ゼミ論文)を提出してもらいます。想定としては、A4判用紙に9pt文字で3枚以上を書きます。文字だけのページばかりなら6,000字以上です。ただし、文字数やページ数は目安です。図表があれば、増減するでしょう。期待する粒度で研究結果を書き表しているかどうかが重要です。したがって、評価指標に文字数やページ数はありません。しかし、この程度の文字数・ページ数を書かなければ期待するレベルには達しないと感じています。

3年生(演習2)

引き続き研究基礎力の向上をはかりながら、皆さん自身の個人研究を開始します。一方では、グループでのプロジェクト研究にも取り組んでもらいます。ひとつだけでない、ひとりだけでない活動を続けることで研究の方法を身につけることを期待します。

年度末にゼミ論文を提出するのは2年生と同じです。期待する内容として、A4判用紙で6枚以上です。文字数にして12,000字です。これもあくまでも目安です。必要なことは、適切に十分に論じていることです。

研究テーマは、個々に設定してもらいます。研究テーマを決める際には、私(森)との議論を通じて固めていきます。当初は方向性を定めるために多くの案を出しながら、詰めていくことになります。研究テーマを決める場面は、研究を実施する中で大きな山場のひとつです。また、進めていく中で変わっていくこともあるでしょう。皆さんが研究を円滑に進められるように、適切なサポートをしていきます。

研究テーマに縛りはありません。ただし、私(森)が指導できる範囲は限られています。また、研究として成り立たない内容もあるでしょう。それについては、率直にお伝えします。それでも進めたいなら止めはしませんが、どうなるのか想像できません。

4年生(演習3)

卒業研究として、3年生から続けてきた個人研究を完成させます。その中で、引き続き研究基礎力の向上をはかります。必要に応じて、グループでのプロジェクト研究にもかかわってもらいます。

卒業論文は本学部が指定した基準を満たすものでなければなりません。それに加えて、学内外の発表を強く期待しています。どのような場で発表するかは、研究テーマや成果によります。詳細は未定ですが、他のゼミとの合同発表会、他大学のゼミ・研究室との合同発表会、学会発表、その他の合同研究会での発表などを想定しています。優秀な論文については、さらに別の機会も検討します。

出席すべき時間と学年間のつながり

「演習」授業

ゼミの本課は「演習」という曜日時限を指定した授業の扱いであることから、指定した時限には出席すべきです。ただし、別途掲げた「授業の進め方」と同様に出欠をとりません。しかし、欠席は自らの機会を手放すことだと考えて、十分に考慮した上で欠席してください。

本年度から、欠席の際には私(森)に一報することを義務づけることにしました。理由は問いませんが無断欠席を繰り返す学生には適切なケアが必要だと考えたからです。

他学年の「演習」授業

この他に、他学年のゼミ時間への出席を大いに期待します。上級生は、下級生の見守りとアドバイスを積極的に行い、下級生の活動のサポートをしてください。下級生は、上級生の活動を見ながら1年後、2年後の自分の在り方を想像しながら上級生の活動に協力してください。

本学部の制度上、必須とすることは難しい取り組みのため必須とすることはありませんが、強く推奨します。特に、上級生のゼミに参加することは大切です。目の前のことだけをこなすことがゼミ(や授業)だとしたら、大学での学習の価値のほとんどを手放していると考えるべきです。

授業時間外の活動(いわゆるサブゼミ)

サブゼミの内容

皆さんの興味に応じてネタは各種取り揃えています。あとは皆さんが一歩踏み出せるかどうかです。

簡単なものづくりとしては、レゴ、ワンボードマイコン(1枚の基板にすべてが載った小型軽量のコンピューター)を使った工作やプログラミングができます。その他にも、各種アプリ(ソフトウェア・アプリケーション)をつくりたいなら、皆でつくっていきましょう。

そのための学習会を開くことも良いでしょう。プログラミング言語を知るだけでなく、そのアプリを実装する対象の情報システムも知らなければなりません。

サブゼミも研究活動の一環です。提案された活動には積極的に参加すべきですし、自らの提案していってください。

サブゼミへの私(森)のスタンス

あくまでも皆さんの自発的で能動的な活動であるべきと考えていますので、求められればネタやアイディアを出しますし、求められなければ何もしません。

最低限の約束として、水曜日にゼミ時間以外にもゼミ室に滞在する時間を用意します。これは、他の授業のオフィスアワーを兼ねています。

皆さんが卒業後に大学で得たことを有意義に使えるかどうかは、在学期間中にいかに大学らしいこと、つまり研究に没頭できたかで決まると考えています。社会学部を含む本学の文系学部は恵まれたことに、複数ゼミで共有とはいえゼミ室があります。ゼミ活動だけのために使えます。この部屋を最大に有効活用して悪いことはありません。

研究することに対して期待する態度

ゼミ活動は研究という性質を持つことから、通常の授業のように「その時間にそこに存在すればよい」ことにはなりません。授業時間外の活動が自分の研究の成否の鍵を握ります。

理想は、研究にかかわることを常に考え、情報収集し、研究成果に結びつけようとすることです。ただし、それを一人で実行することが期待されるのは大学院生です。学部生の皆さんはその前段階として、同じゼミの中で十分に議論すること、協同して様々な試みをすることを期待します。

議論というと難しいと感じるなら、意見交換と言い換えても構いません。なんだったら、雑談と言い換えても構いません。いずれにしても、他の人の意見や考え方を知り、自分の意見や考え方を他の人に伝えることから研究は始まります。

「授業の進め方」にも書きましたが、本来は通常の授業でも「出席すればよい」ことにはなり得ません。ゼミ(演習)では、それ以上に参加が求められるとご理解ください。

当ゼミに所属する学生に期待すること」にも期待することを書きました。

過年度のゼミ活動

2023年度

2023年度は、在籍する2年生と3年生を対象に演習1および演習2を実施しました。複数学年のコラボレーションに注力するために、ゼミ活動のみを行っています。次のようなゼミ活動を実施しました。

  • 2学年合同のゼミ活動(必須)
    • Webアプリケーション開発
      • グループに分かれてテーマを決め、各グループでWebアプリケーションを開発
    • 文献講読
      • ジョン・ハッティ (2018) 教育の効果: メタ分析による学力に影響を与える要因の効果の可視化, 図書文化社
    • プロジェクト研究
      • 2, 3年生混成のグループで、グループごとにテーマを決めて研究活動を一通り実施
        • 2年生はゼミ論文を作成
    • 実際のシステム開発会社の方をお招きした講演会
  • 3年生のゼミ活動(必須)
    • 前述の2学年合同の活動への参加
    • 卒業論文のテーマの決定のための議論と、内容のブラッシュアップ
  • ゼミ活動(任意参加)
    • 神奈川県が管理する本沢ダム(城山湖)の発電総合制御所と城山発電所を見学
    • 長野県岡谷市で開催された産業展示会、諏訪圏工業メッセを1泊2日で見学

2022年度

2022年度は、在籍する2年生を対象に、演習1のみを実施しました。ゼミ活動とサブゼミ活動は次のようなものがありました。

  • ゼミ活動
    • 多摩キャンパスのよさを考えるフィールド調査とアイディア出し
    • 近隣の「まち」を対象に、まちづくりをするためのデータ分析とアイディア出し
      • 公益社団法人 学術・文化・産業ネットワーク多摩 主催「第8回 多摩の学生 まちづくり・ものづくりコンペティション2022」に挑戦
    • 文献講読
      • ルーシー・A・サッチマン(1999) プランと状況的行為, 産業図書
    • プロジェクト研究
      • グループごとにテーマを決め、調査分析して成果報告を個人ごとにゼミ論文として提出
    • その他、情報システムの概要や、論文とはどのようなものかについての実践
  • サブゼミ
    • 多摩キャンパスの訪問を楽しめるようにするモンスター型キャラクターを利用した地図連動ゲームアプリの作成
    • ワンボードマイコンに触れてみる、使ってみる
    • レゴでものづくりのお試し
    • ゼミ紹介のビデオやWebサイト制作
    • 人工知能を活用したプログラミング学習法